【みんなみの里】親子二代で農林水産大臣賞を受賞。気鋭の高梨牧場三代目が語る“牛への想い”

 今回は、4月27日(金)にオープンを控えた 里のMUJI みんなみの里 のほど近くに位置する、高梨牧場を紹介します。
 かずさ和牛(黒毛和牛)の畜産を手がける高梨牧場は、国内最大規模の枝肉共励会における【全国肉用牛枝肉共励会 優良賞】、および【二度の農林水産大臣賞】の受賞を誇り、国内外の業界では知る人ぞ知る、気鋭の牧場です。

 8年前に就農したという三代目・高梨裕市さんの代から、二代目であるお父様(高梨栄一さん)の想いもあり、黒毛和種の飼育へ転換。かつ『名人和牛』と呼ばれる、原料と栄養価にこだわった配合飼料による育成と徹底した管理による高い品質の黒毛和牛の肥育を、ここ鴨川の地で試み、日々あらたな経験を積み重ねています。
 畜産農家として、ものづくりへのこだわりを貫き、真摯な探究心で、“より良いかずさ和牛”を求め続ける裕市さん。良い牛を育てることへの意欲と強い想いの根底には、自分の生を支えてくれた「牛への感謝」があるのだと話してくれました。

 今回、みんなみの里のオープンに合わせて、高梨牧場のかずさ和牛によるローストビーフと、農林水産大臣賞受賞牛の『高梨牧場のA5肩ロース うす切り』が店頭に並びます。

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――裕市さんが高梨牧場で就農したのは、28歳の時だそうですね。

「はい、今から8年前になります。それまでは都心で学び、働いていました。
 僕は長男ですが、両親からは『継げ』とも『やるな』とも言われておらず、十代の頃は正直、積極的に牧場を継ぐという気持ちは芽生えていなかったんです。別の生き方もあるのかなと……。
 転機は、祖父の不幸や従業員の高齢化で人手不足となり、手伝いのため牧場へ戻ったことから訪れました。あるとき、はっとしたんです。学費だとか、僕が着ているこの服一枚をとっても、これは牛たちの命をいただいて、ここにあるんだなと。それで、自分がやるべき最優先の事柄はこれなんだと、畜産への想いが芽生えました」

――高梨牧場は裕市さんの就農と同時に、黒毛和牛牧場へ切り替えたと聞きました。

「このあたりは酪農地帯でしたが、うちは祖父の時代から肉用牛の牧場で、それまではホルスタイン種、交雑種を育てていました。
 黒毛和牛に切り替えた背景には、父の見解があります。僕が就農し、さあこれから始めようというときに、父が『これからは黒毛和種、つまり和牛で活躍できなければ将来はない』と言ったんです。
 僕はド素人の立場でこの牧場へ戻ってきましたが、どうせなにもわからないところから始めるのであれば、黒毛和牛でものづくりをしていこうと決めました」

――お父様はむしろ、新たな道を行け、と示したんですね。

「ええ。そのうえで、父の教育方針なのかもしれませんが『好きにやれ』と。なにも口は出されませんでしたが、裏を返せば、父本人にも黒毛和種のことはわからない。それで僕は積極的に、外部の試みとコンタクトを取っていきました。
 ド素人の強みではないですけれど、元の性格もあって、人に教えを乞うことには、なんのためらいもないんです。また、僕には手についた癖もなければ、先入観もない。まっさらな状態から『今ある最高の技術はなんだろう』と、求める関心がどんどん外へ開いていきました」

――高梨牧場の肉には、ご当地銘柄の『かずさ和牛』と並んで、『名人和牛』のクレジットがついていますね。『名人和牛』は、原料と栄養価にこだわった飼料と徹底した飼育管理で育成された黒毛和牛なのだと聞きました。

「そうですね。『名人和牛』の手法を実践する担い手の集まり『名人会』は、産地にとらわれず、本当に良い黒毛和牛をつくろうといった、垣根を超えた繋がりです。
 良いものをつくるために重要なのは場所ではなく、そのプロセスだということ。新しい概念で先進的な技術と関わる『名人会』のコンセプトは、僕の想いと完全に一致しました。
 背景には、同じ轍(わだち)を踏みたくないという意識もありました。30年選手と一年生が同じ方法を採ったところで、おそらく同じ差が開いたまま。であれば、目指す山頂は同じでも、僕はまったく別の登山ルートを登ろうと考えたんです。必ずしも足で登るだけじゃなく、足場を整えて階段にしようだとか、たまにはロープウェーを使うのもいいなとか。現代にはその技術がありますから」

――ところで、ご自身が手掛けた『かずさ牛』、おいしさの魅力は?

「高梨牧場の和牛、ということであれば、特長はまず脂の質が高いこと。口どけの良い脂の融点と、オレイン酸含有量の高さによる旨みや甘みがあります。オレイン酸はオリーブオイルの主成分と同じで、抗酸化作用や美肌作用があると言われていますし、体にも良く、不飽和脂肪酸も高いので、食味もより高まります。
 一方で、赤身については、これは問屋さんに言っていただくのですが、“つくり”が充実しています。骨は細く、肉は大きく、良い部分を強調させ、皮下脂肪のような本来そぎ落とすところはつくらない。そういった飼育や飼料の技術的なコントロールで、より食肉に適した牛に育てていけるんです。
 無駄な皮下脂肪が薄い牛は、背中が鍛えた腹筋のように割れているんですよ」

――たしかに背中がきれいに割れている牛がいます! そしてなによりこの牧場では、牛たちが本当に心地良さそうに過ごしていますね。

「僕は飼料や飼育の管理を通じて、牛の体質そのものを改善するところから入っていくんです。体質改善によって、牛は内臓を強くし、ストレスを感じず、より快適に育っていきます。
 最初にもお伝えしましたが、僕が就農を選んだ原点には、牛に対する感謝があります。きれいごとのようですけれど、これは本当にそうなんです。祖父も父も畜産を家業にしてきて、僕は牛の命をいただいて育ってきた。十代の頃には分からなかったし、気づきも人より遅かったかもしれないですけれど、ようやくそこに、思うところがあったんです。
 だから、手がけてきた牛たちを最高の牛に育てて、良い評価をいただき、最終的にはおいしいって言っていただけることが、すべての報いではないのかなって……。
 そのためにも、いろんな方法を試し、模索しながら、良い牛を大切に育てていきたいです」

 

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